「食べる」が生物進化を促進する

2024年2月6日火曜日

6:「食べる」の進化

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さて、生命が発生した当初、つまり、単なる物質から生命と呼べる存在になったころ、たとえば、その生命体は深海の生命フロンティアで合成された高分子の有機化合物だった、とします。 その存在は、独立栄養生物であったか、従属栄養生物であったか、というと、従属栄養生物であったであろう、と考えられています。 最古の生命体に最も近いと考えられているのが深海の生命体だと前述しました。 生まれたばかりの生命は、それが果たしてLUCAだったかは解りませんが、ある条件が揃うと分裂する、という特性を持ちました。そのきっかけが熱によるものなのか、あるいは、化学反応なのかはわかりませんが、「代謝」の起源となるような現象が起きたのでしょう。こうして生命体は生まれました。 この生命体がもつ代謝系に合致する成分が偶然キャッチされると、それによって化学変化が起き、自己複製が出来たのでしょう。有機化合物のスープであった、と例えられるほど、太古の海は様々な有機化合物が溶け込んでいた、と考えられています。あるいは、熱水に含まれる硫化水素やメタンを使ったかもしれません。 しかし、その反応も、今の生命体に見られるような迅速なものではなく、随分とのんびりしたものだったと考えられています。推定では、誕生したばかりの生命体が、細胞分裂するには数万年を要していた、と考えられています。 「生きる」は、当初、それほどまでに、実に気長で偶発的な現象だったのかもしれません。 その後、さらに何万年も何億年もかけて、すこしずつ変化しながら、また別の種類の細胞も生まれたことでしょう。 そのなかに、深海の熱水にふくまれる硫化水素やメタンを取り込んで、それを自分のもつ代謝系に利用し、二酸化炭素から有機物を合成するものが生まれました。このような生物は、自分で炭素を獲得できますから、出来上がった有機物を待つよりはずっと生きるのに有利だと言えます。しかし、従来どおりの従属栄養生物も、この独立栄養生物によって生成された有機物を利用できますから、この生物の側にいればぐっと生きるのに便利になります。 最古の生命体に近いと考えられる深海の古細菌も、硫化水素を利用するしくみをもっているものがいます。この古細菌は無機物の炭素を有機物に変えますから、独立栄養生物です。また、硫化水素やメタンによる化学反応ででたエネルギーを使っていますから、化学合成独立栄養生物である、と言えます。 この有機物を作れる生物を起点として、その有機物を食べたり、あるいは共生させていきる生物の世界が構築されています。太古の海でも、このような関係が構築されていたと考えられています。 やがて、深海を脱し、太陽光を利用して二酸化炭素から有機物を合成できる光合成能を獲得した生物が表れます。これによって、大量に放出された酸素分子は地球環境をかえていきます。しかし、酸素を利用できる生物の登場で、いよいよ生物は生存エリアを拡大させ、食べたり食べられたりの関係もより複雑化していったことでしょう。 実は、原核細胞が真核化したのも、この食べたり、食べられたりしあったことによって起きた、とする説もあります。 細胞たちは、生きるための炭素獲得のため、あるいは勢力拡大のため、相手を取り込んでいきました。取り込まれて、その細胞の栄養となっていく一方で、取り込まれても、その細胞のなかに生きづくものもいました。これを「食作用」といいます、食べたつもりが、食べられたものに乗っ取られたものもあったかもしれません。あるいは、食べられたものが、機能を分担して、いすわったものもあるかもしれません。こうして「食べる」ことが細胞の進化に繋がった、と考えられているのです。 さらに時が進んで、多細胞生物になると、いよいよ生物はエネルギーが必要になり、「食べる」もダイナミックになっていきます。しかし、すでに光合成を獲得していた生物界は、豊富に有機物を合成してくれる光合成植物の有機物を栄養として、動くことにより多くのエネルギーを必要とする動物が追随するという、植物と動物の関係が出来ていました。 エディアカラに見られるように、約5億年前になると、実に多様な生物群が見受けられます。それは動物どうしでも熾烈な食べると食べられるが行われていたことが解ります。 こうした海から陸へと脱出する動物もすこしずつ表れます。陸上にはすでに植物と菌類の合体した地位類が約7億年前に生きていました。それを追うように動物も陸上生活できるように進化していきます。 地球のほぼ全土に生物が行き渡ったのは、「食べる」という関係があったからに他成りません。 参考 新・細胞の起原と進化 中村運 P.16、17 「始原細胞は生命としての“ごく基本的なしくみ”は含まれていたのですが、それはまだ原始的で代謝能率の低いものでした。たとえば、現生で最下等といわれている細菌細胞は、十分な栄養の下で二分列するのに20〜30分を要します。これに対し、推定されている始原細胞はその細胞分裂に数万年を要していたでしょう。それほどに始原細胞は代謝能率が悪く、その分裂は遅々としたものだった、と考えられています。」 PYXさんログアウト ------------------------------------------------------------------ (↓以下、削除) そもそも生物は、海中に漂う成分を栄養としていたため、これを「食べる」とすれば、食べるは生命誕生と同時に発生したことになります。しかし、彼らの「食べる」は、私たちの「食べる」とはあまりにかけ離れています。海中に漂う栄養分では、そこから取り出せるエネルギー量は細胞単体としては充分かもしれませんが、多くの細胞からなる私たちの体を維持するにはあまりに少なすぎます。 では、私たちのような大きな体をもつ動物は、どうやって生まれたのでしょう。 そこには、やはり、地球環境を劇的に変えた光合成の発生が大きく関わっていました。 光合成能をもつ生物の出現によって、大量に放出された酸素によって、地球環境も生物の勢力分布も大きく変動したことは、前述しました。 無機物と太陽エネルギーから、有機物を作り出すことができる生物の誕生は、地球生命の新たな時代の幕開けをもたらした一大事でした。 酸素に溢れた世界では、それまで隆盛をきわめていた細胞は生存エリアを酸素の及ばない環境へと限定されてしまい、かわってミトコンドリアを住まわせ、酸素呼吸を獲得した細胞が数を増し、その場を占めるようになります。 しかし、酸素呼吸を獲得した細胞のうち、皆が皆、光合成能を獲得したわけではありませんでした。 自分でエネルギー源を作れない生物は、作れる生物に比べて生存においては不利であると言えます。 しかし、多くの細胞で溢れていたであろう太古の海では、光合成能をもつ生物の大繁殖によって、有機物も大量に漂っていた、と考えられます。 すると、光合成ができなくても、栄養の供給には事欠かなかったかもしれません。 しかし、そうはいっても、光合成能を持たない生物は、効率的に栄養を獲得しなければなりません。 栄養を作り出せないハンデを、動き回ることで、回避する必要があったのです。 しかし、動く能力は、光合成能をもつ細胞においても生存に有利に働きます。 酸素呼吸を可能にし、多くのエネルギー産生を獲得した細胞たちは、光合成能があってもなくても、様々な突然変異を機に、それぞれに適した姿へと、様々な形や機構を獲得していきました。 このような変化が繰り返されるうち、やがて細胞内はしきりが曖昧だった核様体は核膜で仕切られ、細胞小器官はそれぞれの機能を発達させ、真核細胞となりました。また、細胞小器官を繊毛や鞭毛に発達させたものも現れ、格段に運動能力を得たものも表れてきました。 光合成能をもちながら、動く能力をもつものも表れましたし、光合成能がないまま、動くものも表れました。動き方も様々で、細かい繊毛をさわさわと動かしながら移動するもの、体をねじりながらドリルのように移動するもの、ムチのような1本のシッポを使って素早く移動するものなどなど。。 このうち、この1本のシッポ、鞭毛をもつ細胞こそが、動物細胞の起源の姿ではないか、と考えられています。 この細胞が当初から光合成能をもっていなかったか、それとも持っていたが手放したのかは不明です。 現在、最も古い動物細胞として考えられているのが、襟鞭毛虫とよばれる単細胞生物です。 光合成能はありませんが、長い鞭毛をもち、これを運動させ、泳ぐように移動します。そして、襟を立てたような構造をもち、ここに入った栄養分を糧としています。 さらに、鞭毛の獲得だけではなく、光合成によって作られる糖と酸素を使った代謝は大きなエネルギー量を得ることができた、ということも動物細胞が発展する要因となりました。 発生後、動物細胞も、植物細胞の発展に追随して、発展していきます。 これとよく似た細胞が集まった構造をしているのが、カイメンです。 カイメンは、単細胞生物の集まったものですが、多細胞生物への進化の過程を考える上で、注目される生物です。カイメンは壷のような形をしていますが、その構造体をなす一つ一つの細胞は襟鞭毛虫のような形をしています。壷のような形の構造体の中に引き込まれた海水中の栄養分をこの細胞たちが得て利用しているのです。 やがて、動物細胞で構成される多細胞生物が成立すると、腔腸生物が発生し、より多くの栄養を獲得することが可能になりました。 こうして各種の動物へと進化していきます。 やがて、この中から、背骨や神経の原形となるものをもつ脊索動物が生まれ、さらに脊頭生物と呼ばれるナメクジウオのような生物も表れます。 ナメクジウオは、栄養を取り込む口のような器官がありますが、これにはまだ顎がなく、無顎生物とも呼ばれますが、これがやがて口へと変わっていった、と推測されています。 しかし、ナメクジウオのような形の化石は、古生代とされる中国の化石群に見られ、このころすでに、現在の魚に繋がる生物が生まれていた、とすれば、古生代のうちにすべての生物の門が揃ってうたことになります。 進化にともない、魚は、海の中で最も大型で強力な生物へと変わって行きます。 その過程で、背骨や神経、筋肉、脳だけでなく、顎や歯、腸などの進化させていきます。 魚類の体内構造を見ると、原始的ではありますが、私たち人間にも見られる多くの臓器がすでに存在しています。 やがて、海を出て、陸上へと進出していくに従い、肺を獲得し、爬虫類になると、エラは退化させてしまいます。陸上に棲むようになって食べ物が硬くなると、歯の発達は目覚ましいものになります。 獲物を掴んでおくだけのものではなく、噛みちぎる、引き裂くことが出来るようになり、鋭い歯を持つようになります。 ほ乳類に発展しても、基本的には肉食で、鋭い歯を使った食性でした。さらにほ乳類は、丸呑みではなく、咀嚼もするようになりました。 陸上にあがったほ乳類は、基本的に肉食でしたが、やがて、獲物を獲得するより、側にある植物で栄養を賄うものが表れます。草食動物です。かれらは、消化が難しい植物から効率よく栄養素を取り出すために、歯と腸を独特なものに変え、生きる道を模索しました。

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